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指名委員会・報酬委員会の活用

上場企業においては、役員の選解任や報酬を検討・決定する際、取締役会の監督・牽制機能として、指名委員会・報酬委員会を活用するケースが増加しています。

東京証券取引所「東証上場会社における独立社外取締役の選任状況及び指名委員会・報酬委員会の設置状況」(2020年9月7日)によると、東証第一部上場企業では、約60%(法定と任意合計)が指名委員会・報酬委員会を設置しています。また、委員会の構成メンバーでは、約70%が社外取締役を過半数としており、約60%が社外取締役を委員長としています。

指名委員会設置会社

東証第一部上場企業

区分 設置 社外取締役が過半数 委員長が社外取締役
法定 2.9% (100%) 90.5%
任意 55.1% 68.1% 52.9%
合計 58.0%

うちJPX日経400企業

区分 設置 社外取締役が過半数 委員長が社外取締役
法定 8.3% (100%) 87.9%
任意 74.2% 71.8% 57.8%
合計 82.6%

報酬委員会設置会社

東証第一部上場企業

区分 設置 社外取締役が過半数 委員長が社外取締役
法定 2.9% (100%) 88.9%
任意 58.1% 67.7% 53.4%
合計 61.0%

うちJPX日経400企業

区分 設置 社外取締役が過半数 委員長が社外取締役
法定 8.3% (100%) 84.8%
任意 76.3% 69.5% 58.6%
合計 84.6%

では、指名委員会・報酬委員会の具体的な役割や内容は、どのようなものでしょうか。経済産業省が作成している「コーポレート・ガバナンス・システムに関する実務指針(CGS ガイドライン)」の中から『別紙3:指名委員会・報酬委員会活用の視点』の記述(抜粋)を基に、見ていきましょう。

CGS ガイドライン

「別紙3:指名委員会・報酬委員会活用の視点」(抜粋)

1. 委員会の設置目的

指名委員会・報酬委員会を設置する目的は、大きく分けて以下の二つに大別される。

  1. 社外者の関与を強めること
  2. メンバーを絞って効率的な議論をすること(役割分担)

委員会の目的として、社外者を中心にメンバーを絞って効率的な議論をすることが、挙げられています。役員の選解任や報酬を議論するのですから、当事者の集まりである取締役会での議論には限界があります。社外取締役も、社内取締役への遠慮等から、発言に制約が掛かることになり兼ねません。そこで、社外取締役を中心に少人数で議論を行うことで、その弊害を取り除こうというのです。

2. 諮問対象者・諮問事項

  1. 社長・CEO
    ・社長・CEO の選解任について、指名委員会への諮問対象に含めることを検討すべきである。
    ・社長・CEO の報酬について、報酬委員会への諮問対象に含めることを検討すべきである。
    ・社長・CEO の解職基準(解職の要否について議論を始める契機となる基準)を平時から設けておくことを検討すべきである。
  2. 社外取締役
    ・社外取締役の選解任について、指名の方針策定のみならず、個別の選解任を含めて、指名委員会への諮問対象に含めることを検討すべきである。
    ・指名と同様に、経営陣からの独立性を確保する観点から、社外取締役の報酬について、その方針策定と個別額の決定を報酬委員会への諮問対象に含めることを検討すべきである。
  3. 社長・CEO 以外の経営陣
    ・社長・CEO 以外の経営陣の選解任について、社外者中心の指名委員会の場合には、個別の選解任には能動的に関与せず、指名方針の策定への関与にとどまることも考えられる。
    ・社長・CEO 以外の経営陣の報酬について、社外者中心の報酬委員会であっても、報酬委員会が個別の報酬額の決定まで関与することを検討すべきである。

選解任および報酬決定の対象として、特に社長・CEOが強調されています。社長・CEOの人事と報酬をチェックし、経営者の暴走を防ぐことが、委員会の最重要テーマとも言えるでしょう。

社外取締役の選解任や報酬についても検討テーマではありますが、当事者である社外取締役が議論の中心である以上、特定者についてというよりは、期待役割や選解任プロセス、報酬のあり方といった、制度設計・運用チェックが中心テーマとなるのではないでしょうか。

社長・CEO 以外の経営陣(役員)についても、当然検討対象ではあります。しかしながら、たとえば次期取締役候補の選任といったテーマの場合、現実問題として対象者を全く知らないケースもあり、経歴書類や面接等だけでの判断には、限界があるでしょう。すると、個別人材の是非ではなく、指名方針の策定などに限定されるケースも考えられる、というのです。ただし、報酬決定については、業績評価など定量的にルール化できる部分も多く、個別の報酬決定まで関与を検討すべきとしています。

3. 委員会の構成

  1. 委員会の委員となる社外者
    委員会の委員となる社外者に期待される役割に照らして、経営の監督を行う社外取締役を委員として選任することを検討すべきである。なお、社外者比率を高める観点から、補完的に、社外監査役を活用することも考えられる。
  2. 社外役員とそれ以外の委員のバランス
    委員会の構成として、①社外役員が少なくとも過半数であるか、または、②社外役員とそれ以外の委員が同数であって委員長が社外役員であることを検討すべきである。
  3. 委員長
    社外役員以外の委員を委員長とするよりも、社外役員を委員長とする方が、社外役員の主体的な関与を引き出し、独立性・客観性と説明責任の強化の観点から、実効的な委員会運営が図られやすくなることが期待される。他方で、委員会を設置する当初は、運営方法や社内との連携方法が確立していない場合もあり、このような場合には、社内者を委員長とすることも考えられるが、ある程度運営が円滑にできるようになった段階で、改めて委員長を社外役員にすることの是非について検討する、といった工夫が考えられる。
  4. 社内者が委員会の議論に関与する場合の留意点
    社長・CEO の選解任や報酬を諮問対象とする委員会の委員に社長・CEO が含まれる場合には、必要に応じて社長・CEO のいない場で議論できるような工夫を検討すべきである。
  5. 諮問対象者・諮問事項や企業の置かれた状況に応じた委員会の構成・運営の在り方

指名委員会・報酬委員会のメンバー構成については、まずは社外取締役を中心に考えることになるでしょう。できれば社外取締役が過半数になることが好ましいものの、そもそも社外取締役が少人数の会社では困難です。委員長についても、理想的には社外取締役だと思われますが、専門性の問題などもあるため、将来的な検討課題となる会社もあるでしょう。

4. 取締役会との関係

諮問事項の場合、委員会において様々な審議・決定を行ったとしても、最終的な決定主体はあくまで取締役会である。取締役会で委員会の答申内容を踏まえた議論・決定ができるよう、委員会での審議内容を取締役会に詳細に報告することを検討すべきである。

5. 委員会の実効性評価

取締役会の実効性評価の一環として、委員会の構成、諮問対象者・諮問事項、審議・運営の在り方も含めて、取締役会と委員会とが一体として実効的に機能しているかについても評価を行うことを検討すべきである。

6. 委員会で行うべき事項・スケジュール

  1. 指名に係る事項・スケジュール
  2. 報酬に係る事項・スケジュール

7. 委員会の事務局

法定ではなく任意の諮問委員会の場合、あくまでも最終判断は取締役会となります。とはいえ、委員会での議論や決定が、できる限り尊重されなければ、委員会を設置する意味がありません。

指名委員会、報酬委員会の開催頻度について、当初は指名・報酬方針や制度設計などの検討に、相当の時間を要することが考えられます。方針や制度が固まった段階では、運用状況のチェックや制度の見直しが中心となるため、標準的には年数回の開催ということになるのではないでしょうか。

また、委員会の事務局についても重要です。指名委員会であれば、候補者の情報(履歴、実績評価、スキルなど)をどのように整理・説明し、委員が判断し易いようにできるか。報酬委員会であれば、自社の報酬水準や業績指標情報だけでなく、同業他社の報酬情報やトレンドなどとの比較など、委員会への丁寧かつ的確なサポートが求められます。

一昔前であれば、「社長一任」が主流であった役員人事や役員報酬について、任意ではあっても委員会という社外の客観目線が入ることの意味は、極めて大きいと思います。

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