役員報酬制度の設計ポイントPOINT

日本企業(大企業、中小企業別)における、役員報酬制度の傾向と税務

現在、日本企業(大企業、中小企業別)における、役員報酬制度のトレンド・傾向を整理すると、以下のようになります。

役員報酬制度のトレンド・傾向

役員報酬 ・役員賞与

中小企業(非上場企業)
  • 損金算入されにくいといった理由から、役員賞与制度を設けず、月額報酬のみの会社が過半数となっている。
  • 非上場企業の場合、IPO を目指すベンチャー企業などを除き、株式報酬(ストックオプションなど)は、ほとんど設けてない。
大企業(上場企業)
  • 取締役数は減少させ、社外取締役は増加させる傾向が強い。
  • 役割反映の月額報酬だけでなく、短期業績反映の賞与、中長期業績反映の株式報酬を拡大する傾向が強い。
  • 各報酬決定基準を透明化、公表化する傾向が強い。

役員退職慰労金

中小企業(非上場企業)
  • 取締役に対しても、所得税軽減などの理由から、多くの企業が、退職慰労金制度を制定しているか、役員退任時に支給している。
大企業(上場企業)
  • 任期中業績との関連が不明確との理由で、大半の上場企業が廃止している。
  • 廃止までの慰労金については、役員退任時に支給するケースが多い。
  • 役員退職慰労金を廃止する際には、月額報酬などに振り分けるケースが多い。

執行役員の身分、報酬制度

中小企業(非上場企業)
  • 社員の延長という意識が強く、雇用型(社員身分のまま)が大半と考えられる。
  • その場合、給与・賞与や退職金も社員の制度を適用しているケースが多い。
大企業(上場企業)
  • 委任型(取締役と同様)と雇用型(社員身分のまま)が混在している。
  • 雇用型の場合には、執行役員報酬制度を設けている会社と、社員の報酬制度を適用している会社に分かれる。

大企業、特に上場企業については、コーポレートガバナンス・コードや会社法改正などにより、株主目線で見た役員制度改革の流れが顕著となっています。社内取締役を減らし執行役員制を導入・拡大し、社外取締役の割合を増加、役員報酬制度についても、透明化・明確化のプレッシャーが強まり、株式報酬の導入などが拡大しています。

一方、非上場の中堅・中小企業においても、創業オーナーから代替わりのタイミングや、グループ企業を保有する企業については、役員報酬制度を明確にし、役員の業績意欲を向上させようといった動きが高まってきています。

また、税務上、役員報酬や役員賞与を損金算入できる方法は、以下のようになっています。

損金算入できる役員報酬・役員賞与

定期同額給与
役員報酬(月額)については、原則として会計期間開始の日から3ヵ月経過日までに改定し、期中で月額を増減させない給与。 賞与については、年1~2回支給するのではなく、業績報酬といったかたちで12等分して月額報酬として支給することになる。
業績連動給与
業績や株価連動で役員に支給する、複数の要件を全て満たす給与・賞与(一部株式も)。ただし、業績指標や計算根拠が有価証券報告書等で開示されている必要があることから、対象が上場企業や大企業に限定される。
事前確定届出給与
事前に税務署に届出し、届出た金額を届出た日に支払う給与・賞与。税務署への届出は、「株主総会の決議の日から1ヵ月以内」「決算から4ヵ月以内」のいずれか早い日が期限となる。支給する年度の損金となる。
執行役員又は使用人兼務役員の賞与
委任型、雇用型にかかわらず、執行役員については、実質的に経営者であると認められない限りは、賞与についても損金算入できる。また、使用人(従業員)兼務役員の使用人部分の賞与についても、損金算入が認められている。

税務上、取締役の報酬については、社員と異なり、期中で増減させることの制約が大きくなっています。税務署から見ると、役員報酬の増減によって容易に法人税操作をさせないという意図の表れです。

通常、役員賞与は損金算入されにくいため、法人税節税の観点から、支給に消極的な中小企業が多いのが現状です。

役員賞与を損金算入するには、

  • ① 業績報酬といったかたちで、月額報酬に均等配分支給する。(定期同額給与)
  • ② 上場企業であれば、利益指標との連動による業績連動給与とする。
  • ③ 事前確定届出給与として、今期業績を反映し、翌期に支給する。

といった方法が考えられます。また、執行役員や使用人(従業員)兼務役員の使用人部分賞与について は、損金算入が認められます。

非上場企業については、①か③ですが、賞与の性質からは、「③事前確定届出給与」の方が分かりやすいように思われます。ただし、今期の業績反映が翌期の損金となる点と、支給日と金額を届け出た通り支給しなければならない点に、注意が必要です。「前期業績は好調であったが、当期業績の見通しは厳しい」といった場合に、当期業績がより厳しくなるといった現象が発生するからです。

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