参考資料・平均データDATA

役員報酬相場・平均データの特徴とポイント

同業他社、同規模他社が、どの程度の役員報酬を支給しているのか?経営者や人事担当者が、役員報酬について、最も知りたいテーマでしょう。

社員の給与水準であれば、厚生労働省の賃金構造基本統計調査などで、業種別や都道府県別に社員規模企業ごとの給与・賞与水準を、詳細に調べることが可能です。しかし、役員報酬に関しては、自社の同業種・同規模企業と比較できるような調査データは、意外と少ないものです。

ここでは、インターネットや書籍・雑誌に公開されている役員報酬調査をご紹介し、その特徴とポイントを見てみたいと思います。

  • 『民間企業における役員報酬(給与)調査』 人事院

    令和2年(2020年)発表分では、企業規模 500人以上の事業所の中から、企業規模別・産業(業種)別に調査を行い、1,560社からの回答を整理し公表しています。産業区分は以下の通り、企業規模は「3,000人以上」「1,000人以上 3,000人未満」「500人以上 1,000人未満」の3区分となっています。

    産業区分

    農業、林業、漁業、鉱業、採石業、砂利採取業、建設業
    製造業
    電気・ガス・熱供給・水道業、医療、福祉、教育、学習支援業、学術研究、専門・技術サービス業、生活関連サービス業、娯楽業、宿泊業、飲食サービス業、複合サービス事業、サービス業
    情報通信業、運輸業、郵便業
    卸売業、小売業
    金融業、保険業、不動産業、物品賃貸業

    この「民間企業における役員報酬(給与)調査」では、全産業計の企業規模別、役名別平均年間報酬として、以下のような平均実績となっています。

    これによると、社長の平均年収で、全規模合計:4,622.1万円、3,000名以上:7,372.6万円、1,000人以上3,000人未満:4,554.3万円、500人以上1,000人未満:3,963.1万円です。最低規模が500人以上ですので、全般的に高めの平均データとなっています。

    企業規模別、役名別平均年間報酬

    単位:万円

    全規模 3,000人以上 1,000人以上3,000人未満 500人以上1,000人未満
    会長6,354.510,160.45,585.05,130.3
    副会長5,246.46,472.94,548.44,797.8
    社長4,622.17,372.64,554.33,963.1
    副社長3,923.65,449.63,460.32,856.4
    専務3,189.64,501.53,066.92,461.8
    常務2,461.43,396.22,382.02,126.6
    専任取締役1,944.62,446.81,939.51,819.5
    部長等兼任1,703.32,163.11,746.11,597.0
    監査等委員1,947.73,409.71,863.11,389.2
    監査役1,715.62,426.11,655.51,417.9
    専任執行役員2,205.73,099.71,877.01,581.6

    中小企業には参考にならないかもしれませんが、社員数500名以上の会社であれば、業種別・役位別のデータが出ており、有益な調査データといえるでしょう。役付役員以外でも、「専任取締役」「部長等兼任」「監査等委員」「専任執行役員」と細かく分けられている点も、参考になります。

  • 『役員の報酬等に関する実態調査』 一般財団法人労務行政研究所

    2022年調査分では、上場企業と上場企業に匹敵する非上場企業(資本金5億円以上かつ従業員500人以上など)に調査を行い、128社からの回答を集計しています。製造業と非製造業、それぞれ企業規模は「1,000人以上」「300~999人」「300人未満」の3区分となっています。

    社長の平均年収は、企業規模計で5,039万円、1,000人以上:7,502万円、300~999人:4,619万円、300人未満:3,501万円となっています。

    『民間企業における役員報酬(給与)調査』人事院(4,622.1万円)と比べて、規模合計ではやや高くなっていますが、調査年度の違いが影響していると考えられます。300人未満のデータもありますが、上場企業かそれに匹敵する企業が対象ですので、多くの中小企業から見ると、高めの水準であることは、間違いないでしょう。

    より詳細な資料は、同社が発行している人事専門雑誌『労政時報』に掲載されています。

  • 『「役員報酬・賞与・退職金」中小企業の支給相場』 日本実業出版編

    こちらは書籍となりますが、2021年版(2020年調査)では、212社からの回答を集計しており、資本金1億円未満の中小企業が約90%を占めています。文字通り中小企業を対象として役員報酬調査となっています。

    業種区分は、「製造業」「建設業」「卸・小売業」「サービス業」「その他」、企業規模区分は「301名以上」「101~300名以下」「51~100名以下」「21~50名」「20名以下」と、細かく分かれています。

    WEBサイト上では、社長の月額報酬が公開されていますが、企業規模別の中位額で、101~300名:154.2万円、51~100名:113.5万円、21~50名:89.4万円、20名以下:70万円と、中小企業にとってはかなり身近な値となっています。

    書籍では、役員に賞与を支給している企業割合や金額、個別企業の役位別実例金額など、詳細にデータが記載されています。また、退職慰労金についての支給割合や平均金額も調査対象となっています。

  • 『役員報酬の実態に関する調査』 産労総合研究所

    こちらは、2015年と少し前の調査になりますが、上場企業と任意に抽出した企業から、155社の回答を集計しています。「製造業」「非製造業」という業種区分のほか、「上場企業」「未上場企業」の区分、企業規模は、「1000人以上」「300~999名」「299名以下」となっています。

    WEBサイト上では、社長の平均年収3,476万円(2013年3,430万円)が公表されています。退職慰労金制度のほか、役員退任後の処遇についても、調査結果が出ています。

    上場企業と非上場企業を対象にしているものの、平均値を見ると、やや中堅規模の企業が多いように思われます。

    より詳細な資料は、同社が発行している人事専門雑誌『賃金事情』(2016年1月5・20日号)に掲載されています。

  • 『役員報酬サーベイ』 デロイト トーマツ グループ

    デロイト トーマツ コンサルティングと三井住友信託銀行が共同で調査し、2022年版では、プライム上場企業を中心に1,123社(うちプライム673社)からの回答を集計しています。

    大企業や一部上場企業の中には、調査企業として参加することで、集計データの提供を受けている企業も少なくないでしょう。

    WEBサイト上では、売上高1兆円以上の企業における社長の報酬総額は中央値で11,224万円、前年比+13.8%となり、初の1億円越えと公表されています。また、株式報酬や報酬委員会・指名委員会に関する調査結果など、上場企業にとっては有益な情報がまとめられています。

  • 以上、公開情報を中心に役員報酬調査をご紹介しました。他にも、主に中小企業を対象とした調査としては、一般公開はされていませんが、TKC『月額役員報酬・役員退職金(Y-BAST)』などがあります。

    また、上場企業においては、有価証券報告書で役員報酬合計額や対象人数を公開していますので、対象企業を絞って調べてみるのも有効です。

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