役員報酬制度の設計ポイントPOINT

社長・CEOの報酬水準の考え方

数百名以上の会社であれば、社員の平均年収の8~10倍が目安か

社長やCEOといった経営者の役員報酬水準については、どのような観点で考えるべきでしょうか。

以下は、2020年発表の人事院『民間企業における役員報酬(給与)調査』における、社員数500名以上の企業規模別の平均年間報酬水準です。

社長の平均年間報酬

規模 年間報酬 対比
全規模計 4,622.1万円
3,000人以上 7,372.6万円 1.86
1,000~3,000人未満 4,554.3万円 1.15
500~1,000人未満 3,963.1万円 1.0

一方、2020年発表の厚生労働省『賃金構造基本統計調査』で、社員の平均年収を計算してみると、
1,000人以上:591万円、100~999人:475.6万円
といった金額となります。

企業規模区分は異なるものの、「社長の年収は、おおまかに社員の平均年収の8~10倍程度」といったところでしょうか。ちなみに、これは有力企業を中心とした調査ですので、全企業を対象にした平均額では、この数値よりも大幅に下がると思われます。企業規模が小さくなると、社長の平均年収は大幅に下がるものの、社員の平均年収はそれほど急激には下がらないからです。

たとえば、ある社員数100人の会社で、社長の年収が1,600万円で、社員の平均年収が400万円であれば、4倍ということになります。日本国内には圧倒的に中小・零細企業の割合が多いため、平均すれば、小規模企業に引きずられるのです。

経営者の役員報酬水準を決定する要素

では、社長の給料は、何によって決めるべきでしょうか?

これまで様々な会社の経営者報酬を見てきましたが、概ね次のような要素で決定されていると考えます。

  • 企業規模

    たとえば、社員数10人の会社と1万人の会社では、経営者として責任の大きさが異なります。先ほどの平均報酬データでも、社員数500~1,000人未満企業の社長を1.0として、3,000人以上の会社では1.86倍になっていました。

    現在、上場企業では、1億円以上の役員報酬には公表が義務付けられています。東京商工リサーチの発表(2020.6.30)によると、2020年3月決算企業で、236社、480名の1億円以上の役員報酬者が出ていますが、退職慰労金を除くと、若干減少すると思われます。

    また、デロイトトーマツグループが発表した、「2019年度 日・米・欧の社長・CEO報酬水準比較」によると、売上1兆円以上の大企業で、日本の社長・CEO年間報酬の中央値が1.3億円であるのに対して、フランス4.5億円、英国5.0億円、ドイツ6.9億円、米国は何と16.2億円となっています。大企業であっても、「欧米の企業と比べると、日本の社長の給料は安い」というのは、間違いないようです。

    その意味では、「企業規模は影響するものの、日本ではその傾向は緩やか」ということになるでしょう。

  • オーナーか否か

    オーナー(大株主)か否かも、特に中小企業にとっては、極めて大きな要素です。サラリーマン社長であれば、企業業績が悪化しても、減給や最悪解任されるだけです。しかし、オーナー経営者、特に創業者であれば、私財を投じて会社を起こし、場合によっては銀行借り入れに個人保証を付けられ、多大なリスクを背負いこみます。現在の貢献度だけでなく、このリスクテイク料が加わると考えれば分かりやすいと思います。

    ただし、上場企業か非上場企業かで、実際の報酬設定は異なります。株主としてのリスクは、配当として受け取ればよいのですが、税制上、あらかじめ役員報酬として支給された方が、法人税を含めた節税になりやすく、非上場企業のオーナー経営者の多くは、配当より役員報酬を選好します。

    一方、上場企業では不特定多数の株主に配当を払わないといけませんので、結果としてオーナー経営者にも相当額の配当金が支払われることになります。

    非上場企業のオーナー経営者の役員報酬は高く、上場企業のオーナー経営者は低いといえそうです。

  • 経営者としての功績

    就任後、どれだけ企業価値向上に功績があったか、ということです。

    創業者や大株主でなくても、大企業には中興の祖と言われるような、企業の成長・発展に多大な貢献を果たした経営者は多数存在します。

    中小企業でも、就任後に業績を大幅アップさせたり、企業危機から立て直しを実現したような経営者は少なくありません。このように経営者として、就任後どのくらいの功績を残したかという点は、非常に重要です。

    ただし、日本の場合、功績=報酬に直結しない会社が多いことも、事実です。実績の伴わない高給経営者がいる反面、高い実績を実現しているにもかかわらず、社内の序列に阻まれ低報酬に据え置かれる役員も少なくないのです。

  • 企業業績

    一般の人から見れば、「企業業績」は最も理解しやすい要素ではないでしょうか。会社の業績が良ければ、報酬を支払うための原資が豊富ということですし、株主や周囲からの納得も得やすいでしょう。

    しかしながら、企業業績と役員報酬水準を比較してみても、03 の「経営者としての功績」同様、逆転している現象が少なからず見られます。

    意外にも、企業業績という最も分かりやすい要素が、経営者の報酬に対してダイレクトに反映されていないケースも多かったのです。

このように見てくると、「企業規模」「企業業績」「経営者としての功績」といった、誰が見ても納得しやすい要素は、役員報酬決定の条件としては有効なものの、それ以外の要素も大きく影響していることが分かります。

「オーナーか否か」「内部昇格か外部からの招聘か」といった要素のほか、「経営者(決定権者)の役員報酬に対する考え方」によって左右されているのです。

しかし近年、上場企業を中心に、企業業績と役員報酬の関係を透明化する動きが急速に進んでいます。この流れは、本来あるべき姿と言えるでしょう。

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