役員報酬制度の設計ポイントPOINT

執行役員制度、執行役員報酬制度の考え方

上場企業を中心に、執行役員制度を導入する会社が増えてきました。しかし、取締役とは異なり、会社法などの法的な立場ではなく、役員登記も不要です。そのため、会社によって、執行役員の位置づけや報酬制度は、大きく異なります。そこで、役員報酬制度を検討する際のポイントについて、整理してみることにしましょう。

  • 契約形態

    執行役員の契約形態は、委任型と雇用型の二つに分かれます。本サイト上の日本企業(大企業、中小企業別)における、役員報酬制度の傾向と税務 | 役員報酬.com (yakuin-hoshu.com)でも述べたように、中小企業(非上場企業)と大企業(上場企業)で、以下のような傾向となっています。

    執行役員制度のトレンド・傾向

    項目 中小企業(非上場企業) 大企業(上場企業)
    執行役員の身分、報酬制度 ・社員の延長という意識が強く、雇用型(社員身分のまま)が大半と考えられる。
    ・その場合、給与・賞与や退職金も社員の制度を適用しているケースが多い。
    ・委任型(取締役と同様)と雇用型(社員身分のまま)が混在している。
    ・雇用型の場合には、執行役員報酬制度を設けている会社と、社員の報酬制度を適用している会社に分かれる。

    大企業・上場企業では、コーポレート・ガバナンス強化の旗印のもと、近年、社内取締役の人数を減らして社外取締役を増やしてきました。その際、減らした社内取締役は社員に戻すわけにもいかず、また従来の取締役と同様の役割を求めるため、委任型の執行役員が増加しました。

    一方、この間、中小企業・非上場企業では、特に社内取締役を減らす必要性も、社外取締役を増やす必要性もありませんでした。しかし、上場企業を中心に執行役員が増加し、一般化してくると、非上場企業にとっても使い勝手がよく、採用するケースが拡大してきたと考えられます。使い勝手がよいとは、法的な手続きが不要で、役員報酬など税務上の柔軟性が高いといったことです。

    さて、執行役員の契約形態ですが、社員と切り離して役割責任や報酬を明確に区分したいなら委任型、部長の延長線上で柔軟な運用を行いたいなら雇用型(社員型)ということになるでしょうか。どちらでないといけないということはありませんが、1つの会社で委任型と雇用型の執行役員が混在するのは、制度設計の複雑性などから、避けた方がいいように思われます。

  • 取締役との関係と役位

    本サイト上の役員報酬制度事例と検討ポイント | 役員報酬.com (yakuin-hoshu.com)でも述べたように、執行役員を取締役と完全に分離する形態と、一部は取締役と兼務する形態が考えられます。後者は、取締役を業務執行役員と非業務執行役員とに明確に分けることで、コーポレート・ガバナンス強化を図る意図があると思われます。

    取締役と執行役員の関係

    取締役と執行役員分離のケース 取締役と執行役員兼務のケース
    代表取締役会長 取締役会長
    代表取締役社長 代表取締役 社長執行役員
    専務取締役 取締役 専務執行役員
    常務取締役 取締役 常務執行役員
    取締役 取締役 上席執行役員
    上席執行役員 取締役 執行役員
    執行役員 取締役
    執行役員

    後者の形態ではもちろん、前者の形態でも、執行役員の中に役位を設けるかどうか、検討が必要です。特に執行役員の人数が増えてくると、役割の大きさなどによって、執行役員と上席執行役員というように2ランク程度の区分は設けた方がよいかもしれません。

  • 任期、定年、任命基準

    執行役員の任期については、1年とか2年と期間を設定するケースに加え、具体的な任期は設けていない会社もあります。法的な縛りはありませんので、各社の自由ですが、経営体制の一翼であることを考えると、取締役の任期に合わせるのがよいのではないでしょうか。取締役の任期が1年の会社は1年、2年の会社は2年ということになります。ただし、時期については、取締役は通常定時株主総会で選解任が行われますが、取締役に合わせるか、年度末とするか、自社の組織運営上スムーズなタイミングを選択すれば良いと思います。

    定年はどうでしょう。雇用型の場合は、60歳など社員定年に合わせるほか、執行役員はその年齢を超えても継続できるようにしておくか検討します。一方、委任型では、取締役の定年年齢とのバランスを見ながら、決定することになるでしょうか。たとえば、「役付取締役は65歳、役付なしの社内取締役は63歳」と定年年齢を定めている会社であれば、「執行役員も63歳」に設定するといった具合です。

    執行役員の任命基準は、本サイト上の企業事例研究:SCREEN、三菱地所、セブン&アイの役員選任基準 | 役員報酬.com (yakuin-hoshu.com)で紹介したような役員選任基準例などを参考にしてください。取締役と執行役員の選任基準は異なるのか、上席執行役員などを設ける場合には、上席に任命されるための要件は何か、といったポイントを議論します。たとえば、「執行役員の中で、より重要もしくは広範囲の事業分野を担う者を上席執行役員に任命する」といった基準となるでしょうか。

    任命プロセスについては、「取締役の推薦に基づき、取締役会で決議する」といった方式が一般的です。しかし、経営体制強化の観点からは、サクセッションプランで候補者を選抜・育成することや、指名委員会での検討対象に執行役員まで含めることも効果的です。

  • 報酬制度

    執行役員の報酬制度を考える際、雇用型であれば、①社員給与制度の延長線上で設計する、②社員給与制度と切り離して設計する、の2通りが考えられます。一方、委任型であれば、②社員給与制度と切り離して設計する方法が自然でしょう。

    社員給与制度の延長線上で設計する方法

    この場合は、仮に社員等級制度が下から1~8等級までだったとして、執行役員を最上位の8等級に位置づけるか、更に9等級以上を設け位置づけるか。それぞれの等級の基本給テーブルなど、給与基準を検討することになります。役職手当なども、部長や本部長といった職位の手当額と比較し、妥当と思われる金額を設定すればいいでしょう。賞与についても、社員賞与制度をベースに上乗せ額などが必要かどうかを、検討してください。

    社員給与制度と切り離して設計する方法

    この場合は、取締役の役員報酬制度があれば、それをベースに設計するか、別の制度を設計するか。取締役、執行役員、社員それぞれに対して、賞与や株式報酬、退職金をどのように適用するか方針を決めなければなりません。

    雇用型の執行役員には社員退職金制度が適用される一方、取締役の退職慰労金制度が廃止されている会社であれば、その報酬差分を上乗せしておく必要があります。逆に、取締役にだけ株式報酬が支給されている会社であれば、その分を執行役員の報酬に加味する必要があるかもしれません。

    賞与については税務上、「委任型、雇用型にかかわらず、執行役員については、実質的に経営者であると認められない限りは、賞与についても損金計上できる」ことになっていますので、社員同様、柔軟な設計が可能です。

    執行役員報酬制度例

    月例報酬

    号俸 執行役員 上席執行役員
    1号 800,000円 1,000,000円
    2号 850,000円 1,050,000円
    3号 900,000円 1,100,000円
    4号 950,000円 1,150,000円
    5号 1,000,000円 1,200,000円
    評価 改定号俸
    S +2号
    A +1号
    B ±0号
    C -1号
    D -2号

    業績賞与】 

    執行役員800,000円(上席執行役員1,000,000円)×会社業績係数×賞与評価係数(0.5~1.5)

    ちなみに、『民間企業における役員報酬(給与)調査』人事院2020年発表分では、専任執行役員の平均年収は、以下のようになっています。

    全産業計・企業規模別、専任執行役員の平均年間報酬

    全規模 3,000人以上 1,000人以上3,000人未満 500人以上1,000人未満
    2,205.7万円 3,099.7万円 1,877.0万円 1,581.6万円
  • 評価制度

    評価制度は、報酬制度を①社員給与制度の延長線上で設計する場合には、社員評価制度を準用すればよいでしょう。②社員給与制度と切り離して設計する場合でも、社員制度を使うか、執行役員用の業績評価基準や役割評価基準を作成する選択肢があります。

    たとえば、業績評価を目標管理で行うのであれば、担当部門の業績目標だけでなく、全社課題や中長期課題の解決目標を義務付けてもよいでしょう。また、業績評価のみでよいという考え方もありますが、定性的な役割遂行評価を実施することも有効です。「中長期ビジョン」「リーダーシップ」「後継者育成」「コンプライアンス」といった、執行役員としての期待役割や期待行動を評価することで、執行役員としての役割認識を高める効果があるからです。

  • 以上、執行役員制度検討のポイントについてご紹介しました。

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