役員報酬制度の設計ポイントPOINT

役員賞与の決め方

役員賞与とは、会社の役員に対して、通常の月次給与とは別に支給される金銭やその他の報酬のことを指します。役員賞与は、会社の業績や個々の役員のパフォーマンスに基づいて支給されることが多く、インセンティブとしての役割を果たします。

多くの場合、会社の業績(売上高、利益、株価など)や役員のパフォーマンスに基づいて決定されます。また、短期的な業績ではなく、長期的な成長を促進するためのインセンティブプランとして設計されることもあります。

  • 役員賞与の税務上の留意点

    役員賞与は税務上の取り扱いが厳格です。役員賞与を損金算入するには、以下のような支給条件を満たす必要があります。詳しくは、「日本企業(大企業、中小企業別)における、役員報酬制度の傾向と税務」をご覧ください。

    ・定期同額給与:12等分して、月額報酬として支給。
    ・業績連動給与:上場企業や大企業に限定される、業績や株価連動の賞与として支給。
    ・事前確定届出給与:事前に税務署に届出し、届出た金額を届出た日に支給。
    ・執行役員又は使用人兼務役員の賞与:執行役員や使用人兼務役員の使用人部分の賞与。

  • 上場企業における役員賞与の考え方

    上場企業における役員賞与の決め方は、透明性と公正性を重視し、株主や投資家の期待に応える形で行われます。最近では、短期業績に対しては賞与、中長期の業績や企業価値向上に対しては株式報酬を用いる企業が増えています。

    賞与に関しては、定期同額給与や業績連動給与を利用して損金算入を行う方法のほか、損金算入しない方法を採用する企業も多く見られます。これは、税制上の節税メリットよりも、役員ごとの評価を反映しやすく、賞与水準を柔軟に決定できるメリットを重視しているためと考えられます。業績連動給与による支給方法が、決定基準や開示に関する条件が厳しく、やや使いづらい面も影響しているのではないでしょうか。

  • 非上場企業、中小企業における役員賞与の考え方

    非上場企業や中小企業における役員賞与の考え方は、上場企業とは異なります。これらの企業はオーナー企業が多いため、株主や投資家の期待や透明性よりも、税制面のほかオーナーや社長の意向が重視されます。税金を考慮して、役員報酬を月額給与のみとし、賞与を支給しない企業も少なくありません。

    オーナーや社長の意向には、役員報酬の水準、インセンティブの設計、透明性の確保などが含まれます。例えば、「最低限の報酬で、評価や個人差を最小限にし、決定方法や報酬額を公開しない」という企業もあります。一方で、「できるだけ高い報酬を提供し、業績や評価に基づく報酬差を明確かつ積極的に行いたい」という企業も存在します。

  • 役員賞与の決定方法

    賞与決定方法については、次のようなパターンがあります。

    ① 個別報酬基準:各人の月額報酬や役位別基礎額に、業績評価係数を掛け合わせる方式。
            業績評価係数は、全役員一律の場合と個人ごとに決定する方法があります。

    全役員一律係数例:各人の月額報酬×会社業績係数(利益水準などにより取締役会で決定)
    個人評価反映係数例:各人の月額報酬×個人評価係数(各役員の担当業績達成などで個別決定)

    ② ポイント方式:業績等で決定した賞与総額を、各役員のポイントに応じて配分する方式。
            ポイントは、役位と評価で決定する方法などがあります。

    ポイント方式例
    ・賞与総額は、年度ごとの全社税引前利益の5%をベースに取締役会で決定
    ・各人の賞与額=各人の役員評価ポイント×(賞与総額/対象者の役員評価ポイント合計)
    ・役員評価ポイント:

         社長400P、専務300P、常務【250P/A評価、200P/B評価、150P/C評価】
         取締役【200P/A評価、150P/B評価、100P/C評価】

  • 役員賞与の業績指標

    役員賞与の総額決定や個別評価に使用する業績指標には、以下のようなものがあります。

    業績指標例
    ・売上高
    ・営業利益・経常利益・税引前利益
    ・当期純利益
    ・キャッシュフロー
    ・ROE・ROA

    これらの業績指標に対して、評価期間と評価基準を選定します。評価期間とは、単年度か中期(3年など)かを指します。単年度業績は分かりやすくシンプルですが、将来への投資や中長期の業績向上を軽視するリスクがあります。単年度の利益を最大化するには、コスト削減など短期的な施策が効果的だからです。

    一方、評価基準には、計画比・予算比や絶対値基準などがあります。計画比・予算比は、たとえば利益予算の達成率などを評価基準とするものです。絶対値基準は、例えばROEが5%ならいくら、6%ならいくらといった具合に、事前に決めた数値に基づいて評価する方法です。どちらの評価基準が優れているかは一概には言えず、両者を組み合わせて制度設計するケースもあります。

  • 以上、役員賞与の決定方法について解説しました。税制上の制約はあるものの、社員に成果主義型の賃金制度や業績による賞与制度を導入している会社では、役員報酬を会社の業績や各役員の成果に基づいて決定するのは自然なことです。改めて、各企業で役員賞与のあり方について、検討いただければと思います。

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