役員報酬制度事例と検討ポイント
役員報酬制度の各制度における事例と検討ポイントを紹介します。
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役位制度例
執行役員を設けるかどうか、執行役員を設ける場合には、取締役と完全に分離するか、一部は取締役と兼務するか、といった役位区分が考えられます。また、執行役員については、委任型とするか雇用型とするかも、ポイントとなります。
役位制度としては、役位ごとの役割基準・任命基準のほか、任命プロセス(候補者選定、指名委員会など)も検討することになります。
取締役と執行役員分離のケース 取締役と執行役員兼務のケース 執行役員を置かないケース 代表取締役会長 取締役会長 取締役会長 代表取締役社長 代表取締役 社長執行役員 代表取締役社長 専務取締役 取締役 専務執行役員 専務取締役 常務取締役 取締役 常務執行役員 常務取締役 取締役 取締役 上席執行役員 取締役 上席執行役員 取締役 執行役員 兼務取締役 執行役員 取締役 執行役員 -
役員報酬構成
役員報酬の構成については、以下のような観点で検討します。特に上場企業の中長期業績インセンティブについては、株式報酬導入か現金報酬(賞与)とするか検討します。
- 固定報酬
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- 役位別の妥当水準
- 同一役位内のレンジ、改定基準
- 短期インセンティブ
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- 業績賞与の割合、基準額
- 役位別の業績対象、評価基準
- 中長期インセンティブ
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- 中長期業績指標(収益、株価等)
- 株式報酬か現金報酬か?
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月額報酬制度例
役位ごとに、月額報酬額を設定する方法のほか、想定の年俸額と、月額報酬:業績賞与:(株式報酬)の割合を定めて算定する方法などがあります。また、月額報酬額についても、役位ごとに定額(シングルレート)とするか、一定の幅(レンジレート)を設けるかといった選択肢があります。一定の幅を設ける場合には、評価による改定基準も検討します。
役位 定額例
(シングルレート)一定幅例
(レンジレート)代表取締役社長 200万円 200・210・220・230・240万円 専務取締役 150万円 150・155・160・165・170万円 常務取締役 125万円 125・130・135・140・145万円 取締役 100万円 100・103・106・109・112万円 上席執行役員 100万円 100・103・106・109・112万円 執行役員 90万円 90・92.5・95・97.5・100万円 -
役員賞与制度例
役員賞与を設けるか、設けないか。設ける場合には、賞与算定基準については、さまざまなパターンがあります。下記の役員賞与制度例①は「役位別賞与基準額×業績評価係数」で、一定の賞与支給を計画し、役位と業績評価を反映して決定する方式。役員賞与制度例②「ポイント方式」は、一定以上の利益実績が出た場合に限り、利益配分のかたちで、役位と業績評価を反映して分配するスタイルとなっています。
役員賞与制度例①
役位別賞与基準額×業績評価係数役位 役位賞与基礎額 代表取締役社長 400万円 専務取締役 250万円 常務取締役 200万円 取締役 150万円 上席執行役員 120万円 執行役員 100万円 業績評価区分 業績評価係数 S 1.5 A 1.2 B(標準) 1.0 C 0.8 D 0.5 E 0 役員賞与制度例②
ポイント方式:役位別賞与ポイント×1ポイント単価1ポイント単価=(経常利益-5億円)×10%÷役位ポイント合計
役位 役位別ポイント C評価 B評価 A評価 代表取締役社長 300P 専務取締役 200P 常務取締役 120P 150P 180P 取締役 100P 120P 140P 上席執行役員 100P 120P 140P 執行役員 80P 100P 120P -
業績評価・役割評価例
業績評価、役割評価については、役員報酬制度を検討する際の要となります。役位ごとに、評価対象となる業績は、全社か担当部門か、業績指標を何にするか。業績評価だけでなく、役割(遂行)評価を加えるか、どのような要素で評価するか、といったことを検討することになります。全員が全社業績だけの評価だと個人差が出ませんし、担当部門業績だけの評価だと、役員として全社業績意識が希薄になる可能性があります。
役位 評価対象割合 全社業績 部門業績 役割評価 代表取締役社長 100% – – 専務取締役 100% – – 常務取締役 80% 20% – 取締役 30% 50% 20% 上席執行役員 – 70% 30% 執行役員 – 70% 30% -
役員退職慰労金制度例
上場企業では役員退職慰労金制度を廃止する流れですが、多くの非上場企業では役員退職慰労金制度は存続しています。役員退職慰労金制度例①「最終報酬月額×役員就任年数×役位別功績倍率」は、役員退任前の報酬月額と役位、役員就任年数を掛け合わせて支給額を算定する方式です。最終到達点がどこかが重要となります。一方、役員退職慰労金制度例②「ポイント制」は、役位ごとの就任年数を反映させることができます。
特に中小企業では、退職慰労金支給のための資金準備として、生命保険などを利用して、資金積み立てを行うケースも少なくありません。
役員退職慰労金制度例①
最終報酬月額×役員就任年数×役位別功績倍率(+特別功労加算)役位 役位別功績倍率 代表取締役社長 2.0 専務取締役 1.5 常務取締役 1.2 取締役 1.0 役員退職慰労金制度例②
ポイント制:役位別ポイント累計×1ポイント単価(10,000円)役位 役位別ポイント(年) 代表取締役社長 200P 専務取締役 150P 常務取締役 120P 取締役 100P 上席執行役員 80P 執行役員 60P -
役員定年例
役員定年については、設定するかどうか。設定する場合は、何歳とするかを検討します。定年年齢を過ぎても、取締役会や株主総会決議により、任命できるようにしておけば、柔軟性が増します。雇用型の執行役員については、社員定年と同年齢にするか、社員定年年齢を超えて年齢設定するケースもあります。
役位 定年 会長 - 代表取締役社長 70歳 専務取締役 65歳 常務取締役 65歳 取締役 63歳 上席執行役員・執行役員 60歳 -
役員退任後の処遇例
役員定年などによる退任後の処遇については、明確に定める会社と、明確には定めず状況に応じて決定する会社に分かれます。大企業や上場企業であれば明確にルール化しておいた方がよいと思いますが、中小企業の場合はオーナー(一族)かどうかといったことも影響しますので、対象者ごとに判断する方がよいかもしれません。
区分 条件 期間(上限) 報酬 相談役 元、代表取締役 - 月額報酬50~100万円のみ 顧問 元、取締役 原則3年 月額報酬30~70万円のみ 理事 元、執行役員 原則2年 月額報酬30~50万円のみ