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企業事例研究:中部電力の役員報酬減額

企業不祥事や業績悪化の責任をとって、経営者が役員報酬をカットする。上場企業を中心に、しばしば見られる出来事です。それでは、事案によって、誰に対して、どの程度の減額幅や減額期間が妥当なのでしょうか。中部電力のケースで見てみることにしましょう。

中部電力は、2024年3月4日、「役員報酬の減額および取締役への指示について」というプレスリリースを発表しました。
https://www.chuden.co.jp/publicity/press/1213297_3273.html

事案:公正取引委員会から、大口需要家向け都市ガス供給に関する、独占禁止法(以下「独禁法」)に基づく課徴金納付命令

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このケースでは、代表取締役4名全員を対象にしていますが、減額幅と減額期間は会長・社長とその他では、差がつけられています。

 

実は、同社では、2023年にも計3回、役員報酬の自主返上を発表しています。
近いところから、2023年7月28日発表「取締役への指示および役員報酬の自主返上について」の内容は、以下の通りです。
https://www.chuden.co.jp/publicity/press/1211144_3273.html

事案:経済産業省 資源エネルギー庁長官から、電気事業の健全な発達を実現するための対応を求める指示文書(以下)を受領

●保有する電源の内外無差別な卸取引の強化及びこれを通じた短期から長期まで多様な期間・相手方と
の安定的な電力取引関係の構築について、速やかにその具体化について検討を行うとともに、7月28
日までに報告すること。
●電気事業連合会における自社の活動目的を改めて明確化するとともに、当該活動を含む他社との連携
を行うに当たっては、透明性の確保のために必要な措置を講じること。

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この時には、代表取締役4名に加え、取締役1名が追加されています。減額幅は、会長・社長とその他では差がついていますが、減額期間は一律となっています。

 

次に、2023年5月12日発表「役員報酬の自主返上」の内容は、以下の通りです。
https://powergrid.chuden.co.jp/news/press/1210704_3281.html

事案:託送業務で知り得たお客さま情報の漏えいおよび閲覧(小売電気事業者間の公正な競争を阻害するおそれのある事案)

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この時には、社長だけが役員報酬返上の対象となっています。このケースは、先の事案と異なり、行政からの勧告や指導が、子会社に対してのみであったからでしょうか。

 

最後に、2023年4月7日発表「役員報酬の自主返上」の内容です。
https://www.chuden.co.jp/publicity/press/1210564_3273.html

事案:公正取引委員会から、中部地区等における特別高圧電力および高圧電力の供給に関して、独占禁止法に基づく課徴金納付命令(公正取引委員会との間で事実認定および法解釈について見解の相違があることから、取消訴訟を提起することを決定)

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この時は、代表取締役4名全員が対象ですが、月例報酬の10%を2ヶ月減額と、他の3件と比較し軽微でした。やはり、会社側が、命令を不服として取消訴訟を行ったからでしょうか。自主返上する理由も、「本件に関して、お客さまや株主、地域の皆さま、お取引先をはじめ関係者の皆さまにご心配をおかけしていることを踏まえ」としています。

 

さて、中部電力における4件の役員報酬カットについて見てきました。
まず、報酬減額か自主返上か。前者は取締役会決議を経ていることが示されており、後者はあくまで「自主」判断という違いでしょうか。減額幅も、前者の方が高めとなっています。

報酬減額の程度に関しては、
・事案の重大性
に加え、
・行政処分の決定など、経営責任が明白かどうか。
・自社に直接発生した事案なのか、グループ会社で発生した事案なのか。
・代表取締役や会長・社長など、役割責任の大きさはどうか。
といった判断軸により決定することになりそうです。

昨今は、指名報酬委員会の意見を聞いた上で、判断するケースも増えてきたのではないでしょうか。

企業規模が大きくなる程、経営者の目の届かないところで起こる不祥事も少なくないでしょう。しかしながら、対外的に責任を取るのは経営者の役目でもあります。そのため、経営者の役員報酬額は、このようなリスク負担料も含めて決定すべきと言えるでしょう。

2024年3月21日

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