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企業事例研究:トヨタ、ホンダ、日産など自動車メーカー、企業規模や業績と役員報酬水準の比較

国内自動車メーカー6社(トヨタ自動車、本田技研工業、日産自動車、マツダ、SUBARU、三菱自動車)をピックアップし、企業規模や業績と役員報酬水準の関係を比較検討してみましょう。
自社の役員報酬水準を考える際、よく同業他社のデータを参考にしますが、どのような点に注目すべきでしょうか。

以下は、各社の2021年3月期の有価証券報告書から作成した、業績指標や社内取締役の平均報酬水準の比較表です。役員や社員の平均年収は当期実績ですが、業績指標については中期実績を見るため、過去5ヵ年の平均値としました。また、売上高や利益、従業員数といった企業規模や収益性を示す指標については、連結の数値を使用しています。

自動車メーカー各社の業績指標と役員報酬比較

業績指標など トヨタ自動車 本田技研工業 日産自動車 マツダ SUBARU 三菱自動車
連結 売上高・売上収益
単位:百万円
28,856,705 14,670,098 10,597,379 3,312,982 3,177,831 2,067,873
株主に帰属する
当期純利益
単位:百万円
2,097,873 679,879 121,923 49,894 147,717 -59,226
自己資本利益率
(ROE)
10.9% 8.7% 1.8% 4.6% 11.3% -10.1%
従業員数
(臨時除く)
単位:人
366,526 215,465 136,530 49,773 34,289 30,737
単独 株主総利回り
(TSR)
126.8% 112.0% 90.3% 71.1% 84.9% 67.3%
社員平均年収
単位:万円
858 799 797 629 651 652
社内役員平均報酬
単位:万円
18,480 9,314 14,525 5,671 6,750 3,642
社内役員員数
単位:人
10 7 8 7 6 12
  • ※各社の有価証券報告書(2021年3月期)より作成
  • ※業績指標は、2017年3月期から2021年3月期の平均値
  • ※社員平均年収、社内役員平均報酬および員数については、2021年3月期単年度実績
  • ※社内取締役は、執行役など業務執行役員のみ(監査等委員等除く)
  • ※社内役員平均報酬は、その他報酬を除く

一見すると、社内役員の平均報酬は、概ね各社の企業規模に応じた水準になっているように感じられるかもしれません。

更に、トヨタ自動車の値を100%とした場合の指数で、各社の状況を見てみましょう。

自動車メーカー各社の業績指標と役員報酬比較(トヨタ自動車を100%とした指数)

業績指標など トヨタ自動車 本田技研工業 日産自動車 マツダ SUBARU 三菱自動車
連結 売上高・売上収益 100% 51% 37% 11% 11% 7%
株主に帰属する
当期純利益
100% 32% 6% 2% 7% -3%
自己資本利益率(ROE) 100% 80% 17% 42% 104% -93%
従業員数(臨時除く) 100% 59% 37% 14% 9% 8%
単独 株主総利回り(TSR) 100% 88% 71% 56% 67% 53%
社員平均年収 100% 93% 93% 73% 76% 76%
社内役員平均報酬 100% 50% 79% 31% 37% 20%
社内役員員数 100% 70% 80% 70% 60% 120%

まず、本田技研工業ですが、売上高や従業員規模では、トヨタ自動車の約半分程度。純利益の絶対額では30%程度ですが、ROEでは80%となっています。それに対して、役員報酬水準は約50%です。企業規模にはほぼ比例しており、株主総利回り(TSR)でもトヨタ比90%弱で、株主目線でもバランスはとれているように感じられます。

日産自動車については、売上高や従業員規模では、トヨタ自動車の4割弱。純利益では6%、ROEでは17%と、収益力は大きく引き離されています。一方で、役員報酬水準は約80%と、規模や収益力で勝る本田技研工業よりも高水準となっています。ただし、これでもカルロス・ゴーン氏が役員だった頃よりは、抑制されているのです。フランスのルノー傘下ということからも、欧米大企業に比べれば、かなり低い役員報酬ということになるのでしょう。

マツダは、トヨタ自動車に比べ、売上高や従業員規模で10数%程度です。ROEではトヨタ比42%ですが、純利益額では2%と企業間格差が拡大します。これに対して、役員報酬水準は31%。トヨタと比較すると小規模ですが、マツダも年商3兆円を超える大企業です。企業規模の観点からは、役員の平均年収5,000万円台という水準は極端に高いわけではありません。しかしながら、利益水準や株価が低迷していることから、株主からは厳しい見方が出るかもしれません。

SUBARUは、企業規模ではマツダと同じくらいですが、5期平均のROEではトヨタを上回るなど、収益力は高くなっています。役員の平均年収6,000万円台は、マツダとの収益力の差を反映していると言えるでしょうか。ただし、5期平均ROEも、4~5年前の高収益を反映してのものですので、直近では利益水準や株価も低調となっています。

三菱自動車は、従業員数ではSUBARUに近い規模ですが、5期平均の純利益が赤字であり、収益力では他の5社に大きく及びません。役員の平均年収3,000万円台は、年商2兆円企業としては低めですが、現在の収益状況からは致し方ないと言えるでしょう。

最後に、各社の社員平均年収と比較した役員平均報酬水準の倍率を見ておきます。

社内役員平均報酬/社員平均年収

トヨタ自動車 本田技研工業 日産自動車 マツダ SUBARU 三菱自動車
21.5 11.7 18.2 9.0 10.4 5.6

トヨタ自動車の21.5から三菱自動車の5.6まで、随分と企業差があります。実は、東証一部上場企業の平均値は、5倍前後です。要するに、社員と社内取締役の年収差は、5倍程度が相場ということになります。これと比較すると、トヨタの20倍強は、役員がもらい過ぎに感じられるかもしれません。

しかし、この値は企業規模が大きくなるに従い、拡大する傾向があります。トヨタ自動車に関しては、年間売上が30兆円近い、日本のトップ企業です。グローバル企業の中では、まだまだ低い水準ですし、逆にトヨタが上げなければ、同業他社は引上げにくいとも言えるでしょう。

2021年9月1日

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