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企業事例研究:テクノプロ・ホールディングスのCEO選解任基準

前回は、取締役などの役員選任基準について、企業事例をご紹介しました。

企業事例研究:SCREEN、三菱地所、セブン&アイの役員選任基準
https://yakuin-hoshu.com/info/example/808/

 今回は、更にCEOの選解任基準までも定め、公開している会社の事例を見てみましょう。

テクノプロ・ホールディングス株式会社は、取締役・監査役だけに留まらず、CEOの選解任基準も設定し、同社のWEBサイト上で公開しています。

 CEOには、以下のような取締役・監査役選定基準を充たした上で、CEOとして特に求められる「コア要件」を定めており、解任基準まで明示しています。

取締役・監査役選任基準(テクノプロ・ホールディングス)

《すべての取締役・監査役に求められる「前提要件」》

  1. 人格、知識・見識に優れ、高い遵法精神、倫理観を有していること
  2. 客観的判断能力、洞察力、先見性を有していること

《特に社内取締役に求められる要件》

  1. 当社グループを巡る業界動向・関連諸規制、当社グループのビジネスモデルに精通し、各々の専門分野における豊富な実践経験を有していること
  2. 全社的視点の下、組織運営能力を有して、業務遂行ができること

《CEOとしてのコア要件》

  • - 経営トップとしての品位・品格ある存在感を有すること
  • - 心身ともに健康面での不安が無いこと
  • - リーダーシップに優れていること
  • - 変化への対応力に優れていること
  • - 合理的意思決定ができ、決断に責任を持てること
  • - 人材育成、登用について積極的な取組みができること
  • - グローバルな視野で経営ができること
  • - 前職での経営における豊富な経験・実績を有し優れた経営手腕の発揮が期待できること(外部の適任者群から選出する場合)

《CEO解任基準》

当社は、CEO解任基準として、「業績要件」及び「該当する場合には経営トップとして相応しくないと見なされる要件」を取締役会にて定める。

(1)(業績要件)

  • - 当社グループ連結営業利益において3期連続で赤字となった場合

(2)(該当する場合には経営トップとして相応しくないと見なされる要件)

  • - CEOの任に堪えないような健康状態と認定される場合
  • - 会社法331条に定める取締役の欠格事由に準じた事態が発生した場合
  • - CEOの言動やCEOが責めを負うべき不祥事の発覚・損害の発生等により当社グループの信用の失墜や円滑な業務運営に支障をきたしていると認定される場合

テクノプロ・ホールディングス株式会社
IR情報/コーポレート・ガバナンス より抜粋

「該当する場合には経営トップとして相応しくないと見なされる要件」はともかく、『連結営業利益において3期連続で赤字となった場合』と明確な業績要件を定めている点が、注目に値します。この業績要件に該当する場合には、「取締役会は無条件でCEO解任を決議する」としており、厳格な解任基準となっています。

同社の業績は安定しており無縁かもしれませんが、バブル崩壊やリーマンショック後の金融機関や不動産業、コロナ禍での航空・旅行・外食産業など、3期連続赤字も他人事とは思えない企業は少なくありません。

さて、コーポレートガバナンス・コードでも、経営陣幹部やCEOの選解任については、以下のように定められています。

CEOの選解任(コーポレートガバンス・コード 2021年6月)

補充原則4-3

  1. ① 取締役会は、経営陣幹部の選任や解任について、会社の業績等の評価を踏まえ、公正かつ透明性の高い手続に従い、適切に実行すべきである。
  2. ② 取締役会は、CEOの選解任は、会社における最も重要な戦略的意思決定であることを踏まえ、客観性・適時性・透明性ある手続に従い、十分な時間と資源をかけて、資質を備えたCEOを選任すべきである。
  3. ③ 取締役会は、会社の業績等の適切な評価を踏まえ、CEOがその機能を十分発揮していないと認められる場合に、CEOを解任するための客観性・適時性・透明性ある手続を確立すべきである

同社は、この中の「CEOを解任するための客観性・適時性・透明性ある手続を確立すべき」を率直に実践し、投資家などステークホルダーに対して宣言している会社ということになるでしょう。

しかし、同社のように、3期連続赤字といった業績基準まで解任基準として明示している会社は、極めて稀です。

前回ご紹介した、株式会社セブン&アイ・ホールディングスの役員ガイドラインでも、「当社グループ代表(当社社長)の資質および選解任に関する基本方針」として、求められる資質や選解任手続きは定められていますが、ここまで明確な業績基準は明示されていません。

コロナなど何が起こるかわからない時代、業績や株価のように外部からでも判断がつく基準を設定することは、やはり躊躇されるのではないでしょうか。

とはいえ、業績基準までは設けなくても、CEOの選解任基準を定め、指名委員会などで審議することは、経営者にとってプレッシャーになるのは間違いありません。これまでの「社長が次の社長を指名する」「社長は自らの進退は自分で決める」ことが当たり前であった時代は、徐々にかもしれませんが変化していくのでしょう。

2022年2月18日

役員報酬コンサルティングサービス