役員報酬の決定にESG指標を反映する企業が増えている。企業の狙いや投資家の評価は。導入企業の最前線に迫った。
役員報酬の決定にESG指標を反映させる企業がじわり増加中だ。デロイトトーマツグループの「役員報酬サーベイ(2021年度版)」では、回答企業(非上場企業72社を含む1042社)の6.4%となり、前年より1ポイント増えた。また、信託協会が22年3月に公表した「ESG版伊藤レポート」によると、日経225銘柄企業の約2割に当たる43社が、役員報酬制度に何らかのESG指標を設定している。
https://project.nikkeibp.co.jp/ESG/atcl/column/00003/082900038/
<ポイント解説>
本レポートでは、日本でもグローバル企業を中心に、ESG指標の役員報酬反映が広がってきている様子を紹介しています。
ESGは、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の頭文字を合わせた言葉です。特に、グローバルに事業を展開する上場企業の経営者に対しては、短期・中長期の業績に加え、温暖化などの環境問題や人権などの社会問題への取組みも、評価対象にしようというのです。ESG投資に積極的な企業を対象にした投資信託が増加するなど、株価にも少なからず影響を及ぼしています。
一方、上場企業の中でも、中堅以下の企業にとっては、まだまだこれから検討という感じではないでしょうか。自社にとって適切なESG要素を選定し、評価基準として使用し得る明確な指標として設定するのは、容易なことではありません。また、外部のESG評価機関を活用する場合には、相応の費用や手間がかかります。ESGと業績向上を両立させることに、困難を感じる企業もあると思います。
ただし、この流れは、いずれ中堅以下の上場企業にも、拡大していくでしょう。「業績かESGか」ではなく「業績もESGも」ということです。例えば、今後開示が進む男女賃金格差や女性管理職比率は、人材採用に影響するでしょう。環境問題や人権問題を起こした会社は、消費者や得意先から敬遠されることも予想されます。
ちなみに、日本取引所グループが、企業のESG情報開示を支援するため、「JPX ESG Knowledge Hub」として、セミナー無料動画や最新情報を掲載したサイトを開設しています。
https://www.jpx.co.jp/corporate/sustainability/esgknowledgehub/index.html
まずは、現状と他社事例を研究し、自社での取組み方針について、検討していただければと考えます。