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『「攻めの経営」を促す役員報酬-企業の持続的成長のためのインセンティブプラン導入の手引-』を改訂しました (経済産業省2023.3.31)

経済産業省は、中長期の企業価値向上に対応する役員報酬プランの導入を促すため、『「攻めの経営」を促す役員報酬-企業の持続的成長のためのインセンティブプラン導入の手引-』を作成・公表しています。今回は、2022年7月に改訂を行った「コーポレート・ガバナンス・システムに関する実務指針」(以下「CGSガイドライン」という。)の内容を踏まえ、従業員に自社株報酬を付与する場合のQ&Aの追加を中心として、改訂を行いました。

https://www.meti.go.jp/press/2022/05/20220513001/20220513001.html

<ポイント解説>

今回の『「攻めの経営」を促す役員報酬-企業の持続的成長のためのインセンティブプラン導入の手引-』では、

「従業員に対する株式報酬の付与に関するQ&A」の新設

が注目点です。

具体的には、

Q78 従業員向け株式報酬を導入する意義はどこにありますか。

Q79 従業員に株式報酬を発行したい場合、どのような選択肢がありますか。

Q80 従業員に向けた株式報酬の支給は労働基準法における「賃金通貨払いの原則」には抵触しませんか。

Q81 従業員に株式報酬を交付する際、役員を対象にする場合と比較して異なる点はありますか。

Q82 株式報酬制度について従業員に説明したいのですが、気を付けることはありますか。

Q83 従業員が付与された自社株報酬を売却することはできますか。

といった項目が追加されています。

要約すると、

・従業員への株式報酬付与は、企業価値・株価への意識やエンゲージメント向上効果が期待できる。

・注意点としては、取締役と異なり、株主総会決議などは不要だが、労働基準法との関係で一定の条件をクリアする必要がある。

・あと、社会保険料、税務、インサイダー取引などにも、注意が必要である。

といったところでしょうか。

上場前ならストックオプション、上場後は従業員持株制度を導入している会社は多くあります。上場企業においては、「従業員持株への奨励金引上げ」と「株式報酬付与」との比較検討ということになるでしょう。従業員持株への奨励金付与率については、5%か10%程度といった企業が多数ですが、これを(大幅に)引き上げるという手段もあります。

欧米諸国においては、従業員の中でも幹部・管理職クラスに対する株式報酬・中長期インセンティブは、一般化しているようです。日本でも、取締役への株式報酬が急速に拡大してきたことを考えると、次は幹部・管理職となっても不思議ではありません。

しかし、取締役の報酬改革と異なり、株主・投資家からのプレッシャーは少なく、欧米のように幹部社員のリテンション(流出防止)が深刻課題となる上場企業も比較的少数です。従業員への株式報酬については、しばらく様子見の会社が過半ではないでしょうか。むしろ、諸外国に比べ社員報酬水準の見劣りが顕著となっており、人件費配分の観点からも、賃上げ・ベースアップが優先課題と言えそうです。

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