昨今の役員報酬の構成は、会社経営における役割や責任等への対価として主に役位別の固定額を支給する「基本報酬」、1年間の成果創出に応じた「短期インセンティブ(STI)」、1年超の期間における成果創出に応じた「中長期インセンティブ(LTI)」の3つから構成されるのが一般的です。
企業群Aの平均的な報酬ミックスは、基本報酬:STI:LTI=約61%:25%:14%でした。STIとLTIを合計したインセンティブの割合が39%と3分の1以上を占めています。一方、企業群Bの平均的な報酬ミックスは、基本報酬:STI:LTI=約94%:5%:1%となり、基本報酬が主となっています。
企業群A:東証1部または東証2部上場企業のうち、売上高3000億円以上の企業(計210社)
企業群B:ジャスダックまたはマザーズ上場企業のうち、2018年4月1日以降上場の企業(計50社)
https://www.murc.jp/report/rc/column/quick_mgmt_trend/qmt_211214/
<ポイント解説>
上場企業の中でも、売上高3,000億円の大企業は基本報酬(固定報酬)割合が約61%であるものの、ジャスダックやマザーズ上場の企業では約94%と、まだまだ固定報酬中心の役員報酬体系であることが示されています。昨今、上場企業の役員報酬については、方針の明確化、透明性の確保に加え、中長期の企業価値向上に対するインセンティブ検討が求められています。
ところが、新興市場への株式公開企業では、一般的に大企業と比べると役員報酬水準が低く、固定報酬中心の構成となっていると思われます。加えて、大株主である創業経営者なども多く、業績連動賞与や株式報酬を導入しなくても、業績や株価向上に対する十分なインセンティブを有しているとも言えます。また、役員報酬改革の必要性は感じていても、社内での知見やマンパワーが不足しており、様子見しているケースも少なくないでしょう。
しかしながら、大企業での役員報酬事例や、制度改定をサポートする外部の専門サービスも増加していることから、今後はこれらの企業でも、短期および中長期インセンティブを拡大していくことが予想されます。