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企業事例研究:武田薬品工業「全取締役の報酬額を開示し、社外取締役にも長期インセンティブを支給」

武田薬品工業株式会社は、2020年3月期から、社外取締役も含めた全取締役の個別役員報酬額を開示しています。年間1億円以上の役員報酬を得ている役員については開示義務がありますが、1億円未満の役員の個別報酬額まで開示する日本企業は、極めて稀です。

以下は、2021年3月期の有価証券報告書に記載されている、取締役の報酬総額の内訳ですが、この他に取締役ごとの個別報酬額の一覧まで記載されています。

役員区分ごとの報酬等の総額、報酬等の種類別の総額および対象となる役員の員数

役員区分 報酬等の総額(百万円) 報酬等の種類別の総額(百万円) 対象となる役員の員数(名)
基本報酬 業績連動報酬等 非金銭報酬等
賞与 業績連動型株式報酬 譲渡制限付株式報酬
取締役
(監査等委員を除く)
(社外取締役を除く)
(注)1、2
2,638 493 450 1,194 501 4
取締役(監査等委員)
(社外取締役を除く)
50 38 13 1
社外取締役 439 227 212 11
注)
  1. 使用人兼務取締役の使用人分給与および使用人分賞与は含まれていません。
  2. 上記の報酬等のうち、業績連動型株式報酬は業績連動報酬等および非金銭報酬等の双方に該当しますが、業績連動報酬等として表示しております。

使用人分報酬等の総額、使用人分報酬等の種類別の総額と対象となる役員の員数

役員区分 報酬等の総額(百万円) 報酬等の種類別の総額(百万円) 対象となる役員の員数(名)
基本報酬 業績連動報酬等 非金銭報酬等
賞与 業績連動型株式報酬 譲渡制限付株式報酬
取締役
(監査等委員を除く)
(社外取締役を除く)
(注)1、2
1,061 171 285 421 42 3

武田薬品工業株式会社 2021年3月期 有価証券報告書より

社内取締役4名のうち、3名は使用人分報酬も支給されています。そのため社内取締役4名の役員報酬総額は、使用人(従業員)分報酬も合せると約37 億円となり、水準の高さが目を引きます。ただし、基本報酬部分は、使用人分を合わせても総額の18%程度で、残りは「年度業績反映として賞与」「長期インセンティブとしての株式報酬」など、業績や株価反映部分が中心の構成となっています。

更に、注目すべきは、社外取締役の報酬です。平均4,000万円程度と、国内の相場から見ると高水準ですが、約半分は、株価に連動した長期インセンティブとしての株式報酬で支払われています。また、取締役会議長、報酬委員会委員長、指名委員会委員長には、基本報酬に加えて手当が支給されるなど、きめ細やかな制度となっています。

報酬水準の高低はともかく、社外取締役の役員報酬の考え方で述べたように、役割に応じた報酬設定、中長期的な企業価値向上に対するインセンティブを実践している会社と言えます。

武田薬品工業については、社内取締役4名のうち外国人が3名を占め、

  • 少数の社内取締役と、インセンティブ中心の高い役員報酬水準
  • 過半数を占める社外取締役と、きめ細かい報酬設定
  • 取締役の個別報酬開示

など、米英などのグローバル企業の役員報酬制度をイメージするには、最適な企業ではないかと考えます。

今後、他の大手上場企業が武田に近づいていくのか、それとも国内では特異な事例として存在し続けるのか、研究対象企業として興味は尽きません。

2021年7月1日

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