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企業事例研究:サイボウズ「取締役社内公募制導入、社外取締役は0人」

サイボウズ株式会社が取締役の社内公募制度を導入し、この制度による取締役17名が誕生しています。同社はグループウェア開発・販売を本業とし、自ら多様な働き方を実践するとともに、積極的に問題提起や情報発信を行い、コロナ禍で益々存在感を高めています。

そのサイボウズが、2020年12月3日に、『次期取締役候補を社内公募で選出』として、「年齢や役職等を問わず自薦・他薦含む社内公募で次期取締役候補を選出する」ことを発表しました。

それまでの取締役3名のうち、社長以外の3名は立候補を行わない予定というのです。事実、2021年3月の株主総会でも公募制による取締役17名が選任され、社長以外の取締役が総入れ替えするかたちとなりました。その中には、2020年4月入社の新入社員も含まれています。

また、同社では、社外取締役を引き続き選任していません。2020年12月期の有価証券報告書では、社外取締役を選任しない理由を以下のように述べています。

当社は社外取締役を選任しておりません。当社のように変化に富んだIT業界において、迅速かつ柔軟に対応できることが何より重要と考えております。このような中、当社の属する業界や当社の理念及び事業環境等に対する理解が不十分な社外取締役を選任した場合、取締役会での迅速かつ柔軟な意思決定が阻害されるおそれがあります。

また、法令上の社外取締役の要件を満たしつつ、当該おそれのない適任者を探して社外取締役として選任することは容易ではない上に、報酬等を含めて相応のコストを要すると考えるため、これを実施しておりません。しかしながら、当社は、意思決定における透明性の向上や多角的視点の導入、ガバナンス体制については極めて重要と考えており、社内外を問わず経営の透明化を図ることを前提として、「誰もが取締役の役割を担う」と考えております。一人ひとりが自立心を持って質問責任を果たし、意思決定者がオープンな場で説明責任を果たすことにより、株主に選任された取締役のみによるガバナンスを超える組織が実現できると考えております。

今後は、これら透明性や議論、助言の状況を踏まえたうえで、社外取締役の選任を検討してまいります。

サイボウズ株式会社
2020年12月期 有価証券報告書より

社内取締役人数の大幅増員に、社外取締役はゼロ。昨今のコーポレートガバナンスの流れに対して、完全に逆行しているように見えますが、株主総会で承認されている以上、これも1つの経営スタイルということになるでしょうか。

さて、同社の役員報酬についても見てみましょう。同年の有価証券報告書では、以下のように記載されています。

役員区分ごとの報酬等の総額、報酬等の種類別の総額及び対象となる役員の員数

役員区分 報酬等の総額(百万円) 報酬等の種類別総額(百万円) 対象となる役員の員数(名)
固定報酬 業績連動報酬
取締役 68 68 3
監査役
(社外監査役を除く)
社外監査役 10 10 3

サイボウズ株式会社
第24期(令和2年1月1日-令和2年12月31日) 有価証券報告書より

  • 取締役の報酬は、株主総会決議の報酬限度額内で、代表取締役に一任
  • 取締役の報酬は、基本報酬及び業績等を勘案した賞与によって構成
    ・基本報酬は、その役割に応じて決定する固定報酬
    ・賞与は、全社業績であるクラウド関連売上及び事業環境等を勘案し決定

となっていますが、2020年度は業績連動報酬(賞与)が支給されていません。

これまで順調に業績を向上してきた会社としては、取締役の報酬水準も1人当り2,200万円強と、控えめに見えます。ただし、昨年までの取締役3名は、大株主で一定水準の配当収入もあり、トータルの収入としては問題ないのかもしれません。

一方、今回の社内公募制を取材した記事によると、新制度による取締役には「取締役としての報酬はない」ということですが、取締役会への出席なども無報酬ということでしょうか。取締役である以上、法的な責任も決して軽いわけではありません。

確かにユニークな取り組みではありますが、それで上場企業のガバナンスが機能していくのか、今後も注目していきたいと思います。

2021年6月24日

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