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企業事例研究:SCREEN、三菱地所、セブン&アイの役員選任基準

取締役など役員の選任基準は、役員としてどのような資質が求められるかを示す、非常に重要なテーマです。役員選任基準について、一般に情報公開している企業の事例を見てみましょう。

まずは、株式会社SCREENホールディングスの取締役候補者選任基準です。キーワードを抜き出してみると、「ステークホルダー」「グループの中長期的な企業価値向上」「リスクマネジメント能力」「人格、見識、倫理観」「経験や専門性の多様性」といったことになるでしょうか。これらは、社内取締役だけでなく、社外取締役にも求める共通の基準として挙げられており、更に社外取締役には「独立性判断基準」を満たしていることが追記されています。

また、選任基準だけでなく、取締役の解任基準を明示しているのも特徴といえるでしょう。

SCREENホールディングスの取締役候補者選任基準

《取締役候補者選任基準》

  1. ステークホルダーの期待に応え、当社グループの中長期的な企業価値向上に資する十分な経験と専門性を有すること。
  2. 全社的で中立的な見地から、公正な判断を行うことができ、リスクマネジメント能力を発揮できること。
  3. 取締役としての責務・役割を適切に果たすために必要となる時間・労力を確保できること。
  4. 人格、見識に優れ、高い倫理観を有すること。
  5. 会社法第331条第1項に定める取締役の欠格事由に該当しないこと。
  6. 社外取締役候補者については当社の独立性判断基準を満たしていること。
  7. 当該候補者が選任されることで、経験や専門性の多様性を保持し、取締役会がその機能を最も効率的・効果的に発揮できるとともに、経営の監督が全社に行き届くようバランスがとれること。

《取締役解任基準》

  1. 選任基準を明らかに満たしていない事象が生じた場合。
  2. 不正の行為または法令もしくは定款などの社内規定に違反する重大な事実が生じた場合。

株式会社SCREENホールディングス
「取締役および監査役候補者選任基準ならびに取締役解任基準について」より抜粋

続いては、三菱地所の取締役候補者選任基準です。取締役共通の要素として「グループの基本使命理解」「中長期的に持続可能な企業価値向上に資する資質及び能力」を掲げています。更に、社内取締役には「インテグリティ(誠実さ、真摯さ、高潔さ)、指導力、先見性」「グループの事業に関する豊富な知識と経験」を、社外取締役には「自らの経営経験」や「専門分野における経験や知見」「株主共同の利益に資する客観的で公平公正な判断」を求めています。

これらの選任基準により、指名報酬委員会で取締役候補者を指名するとしています。

三菱地所の取締役候補者選任基準

《取締役候補者選任基準》

1.目的
本基準は、指名委員会が取締役候補者を指名する際の基準を定めるものである。

2.取締役候補者
取締役候補者は、会社に対する善管注意義務を遵守すると共に、「住み・働き・憩う方々に満足いただける、地球環境にも配慮した魅力あふれるまちづくりを通じて、真に価値ある社会の実現に貢献する」という当社グループの基本使命を理解し、丸の内地区のまちづくりをはじめとする事業特性を踏まえ、中長期的に持続可能な企業価値向上に資する資質及び能力を有する者とする。

(1)社内取締役候補者
社内出身の取締役候補者は、上記に掲げる資質及び能力として、インテグリティ、指導力、先見性等において特に秀でた者であることに加え、全社的な視野で監督機能を担いうる当社グループの事業に関する豊富な知識と経験を有し研鑽を積んだ、当社の事業グループ担当役員・コーポレートスタッフ担当役員、若しくはその経験を有する者、又はそれに準ずる者とする。

(2)社外取締役候補者
社外取締役候補者は、上記に掲げる資質及び能力に加え、自らの経営経験やマネジメント経験、又はグローバル・金融・リスクマネジメント等の専門分野における経験や知見等を活かし、特定の利害関係者の利益に偏らず、株主共同の利益に資するかどうかの観点から客観的で公平公正な判断をなし得る人格・識見を有する者であり、「社外取締役の独立性基準」を充たす者とする。

3.本基準の改廃は指名委員会の決議による。

三菱地所株式会社 コーポレートガバナンス・ガイドラインより抜粋

最後は、セブン&アイ・ホールディングスの役員選任基準です。同社では、「役員ガイドライン」として、自社およびグループ事業会社(上場子会社除く)の代表取締役、取締役、監査役、執行役員その他の役員の要件、資質、教育方針について定めています。

役員共通の要件として「企業理念の理解・実践」「誠実さ」「法令、行動指針、倫理・規範遵守」「見識・公正さ」などが挙げられています。また、業務執行を担当する役員(代表取締役、執行役員等)については、「変化への対応と基本の徹底」「戦略システム立案」「戦略遂行のための組織化」「経営統制」に加え、「将来の経営陣育成、未来成長の組織づくり」といった後継体制整備についても求めています。

セブン&アイ・ホールディングスの役員ガイドライン

1.役員に必要となる要件

当社グループ会社において、それぞれの役員が必ず備えるべき要件は次のとおりとします。

  1.  当社の企業理念を理解・実践し、お客様、取引先、株主、地域社会そして社員等に信頼される誠実さを有すること
  2. 法令、企業行動指針、社内外の倫理・規範を遵守し、役員として必要な見識、公正さを有すること
  3. 当社の独立役員候補については、当社が定める役員独立性基準を満たすこと

2.業務執行を担当する役員に求められる資質(代表取締役、執行役員等)

当社グループ会社における、業務執行を担当する役員に求められる資質は次のとおりとします。

  1. お客様の立場に立って考え、変化への対応と基本の徹底を自ら実践し、社員の目標となりうる資質
  2. 取締役会等において自由闊達に議論し、建設的な意見・提言を行い、当社グループ全体の戦略ガイドラインと各社の経営環境、経営資源を統合的に把握し、一貫性のある戦略システムを立案する資質
  3. 戦略を遂行する効果的な組織の編成・維持・修正を行う組織化の資質
  4. 戦略遂行の組織的活動を、活力ある形で効率的に運営指揮し、適切な判断で経営を統制していく資質
  5. 持続的成長と永続的な発展のために、将来の経営陣を育成し、未来成長の組織づくりを可能とする資質
  6. コンプライアンス・内部統制・リスク管理の構築と実践にかかる資質
  7. 上記の他、各社経営上、業務執行を担当する役員メンバーとして求められる資質

株式会社セブン&アイ・ホールディングス 役員ガイドラインより抜粋

これら企業のように、役員選任基準を定めるだけでなく、積極的に公開することは、その企業や役員にとって厳しさを伴います。株主や社員・関係者から、「現在の役員や候補者は、その選任基準をクリアしているのか」が常にチェックされるからです。特に、業績悪化時やコンプライアンス問題発生など有事の際には、より一層厳しい眼差しが向けられることになります。

それだけに、役員選任基準の公開は、上場企業がガバナンスへの取り組み姿勢を示す格好の施策とも言えるでしょう。外部からもチェックしやすくすることで、社長など経営トップが恣意的に役員を選ばない、といった宣言にもなるからです。

2022年1月6日

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